すべてがFになる

小説、すべてがFになる、を読んだ。

作者の頭の良さがよくわかる、理系ミステリー。

 

私の頭はたぶんとっても文系で、それゆえに数学とか物理とかデータ分析とかを、純粋に楽しんでいる人を見ると、少し羨ましくて魅力的に見える。視界に映っているのと本当に見ているのとでは全然違うことで、ちゃんと得られる情報を見て考えて、自分の言葉にするというプロセスを、ぬかりなくやっていると思うからである。

 

主人公の犀川先生は、だからとても魅力的だった。前提の一切をとっぱらって、自分の目と頭脳で世界を捉えるから。それを、他人を意識せずにやってのけるから。そういう人たちの率直さに、時々、とても勇気づけられることがある。

 

あとがきにあった、思考回路で人物をかき分ける、というのもおもしろいな、と思った。確かに、人の思考回路を比べてみたら、とってもおもしろいかもしれない。自分とは違うその道筋に、驚いたり必要としたりするのだろう。もっと知りたいと思って惹かれたりするのだろう。

 

研究者である作者に、興味が出てくる私であった。

 

気になった言葉のメモ

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もえの突拍子もない提案の透明感が気に入った
意味のないジョークが、最高なんだ

物理的な距離は問題ではありません。会いたいか、会いたくないかが距離を決めるのです

仕事をするために頑張ってきたんじゃないかな?今さら仕事がなくなるなんて騒いでいるのはおかしいよ

悲しいというには、自分は100年若すぎる

なぜ役に立たなくちゃいけない?役に立たないものの方が楽しいじゃないか
そもそも僕たちは、何かの役に立っていますか?

研究ってね。なにかに興味があるからできるというものじゃないんだよ。目的を見失うのが研究の心髄なんだ。